※通信180号からの抜粋です
制度的な女性差別は解消されたはず韓国。しかし、いまだ残る見えない差別に人生を抑圧される女性たち。キム・ジヨン という名の主人公の少女時代から結婚・出産まで描いた本書を紹介したい。 2016 年 10 月発行 、 日本でも 2018 年 12 月邦訳が出て話題に。 同名の映画も公開されている。
「これは、まさに私の話です!」二十代~三十代の女たちが声を強め、男たちはなぜか小声に…というのが本書が 世 に出た時の反応だったようだ。キム・ジヨン 1982 年生まれで最も多い名前=この世代が普通に体験する普通の苦労の体現)が向き合う差別や生きづらさを描きながら、祖母世代 ・ 母世代、 現代と、 韓国社会に普通にあった (ある 厳しい 女性差別や社会構造を 見せてくれる。 1986 年生まれの娘に薦められ、読んでみた。祖母世代の価値観 を否応なしに受け取りながらも 、経済的にも社会的にも日常を切り盛りしていく「韓国の母」 たちの強さ 。 就職試験に 失敗し「大人しく家にいて嫁に行け」と父に言われパニックになる娘。母は「何時代だと思ってるの!」と烈火のごとく怒り、「ジヨンは おとな しく 、 するな!元気出せ! 騒げ!出歩け 」と励ます。 その強さが私にはあっただろうか…。女子に優しくと見せかけて、大事なことには参画させようとしない男子部員に対し、「女子が会長になるまで意地でも頑張ってみせますからね!」と言い切る大学 サークルの 女子の先輩。 10 年後女子の 後輩 が会長になったとの知らせに「 10 年経てば山河も変わる、か」と淡々とつぶやく彼女。後輩 や 娘世代に 、私は 何か手渡して やれただろうか…。 30 年以上たっても別姓選択制が認められない、この日本で。
キム・ジヨンの母オ・ミスクはじめ彼女の周りの女性たちが素晴らしい。女性はみんなフルネームで登場し、キム・ジヨンの夫以外の 男たちの名前は 記されない。私たち女性が名前を奪われてきたように。
娘世代、親世代、そして、男性も、ぜひ、感想をお聞かせください。